斜 か ら の 切 り 口
クラウスの事を聞きたいって?
ああ、彼とは何度か任務を共にした事もある。比べられる事もある。お互いに目立つ存在だからな(本当は矢鱈に目立つ諜報員など二流でしかないのだが)
だが彼と私とは全く別種の人間だ。容姿も性格も性癖も―――彼は知っていたようだった。
咎められる事は無かった。いい顔もされなかったがね。自分に危害が及ぶのでなければ構う事は無いと彼らしく合理的な割り切り方をしていた。私も彼も互いの能力だけを評価している。敵には回したくない相手だが、味方にするのもリスクが高すぎる。
そう、利用するのは能力だけでいい。能力の前には性格の否定など無意味だ。
長年、私も彼も自分の銃の引き金を事ある毎に引き続けている。それが続くと、いつの間にか人を殺す事に何のためらいも感じなくなる。狙いを定める時間が短くなって、相手の一挙一投足を窺って、最後には相手が動いた瞬間に、反射的に引き金を引くようになる。 それは、銃が体の一部になる、とも言える。なんなら君で試してみようか?
遠慮するだろうね。こちらも民間人を無闇に殺すのは後味が悪いものだ。
だがクラウスは違う、自分にそれを許していない。
彼はよく教会に行くらしいな。本人は昼寝に行くと言っていたが―――どうだか。
彼は軍人の家系に生まれて、軍人として育てられて、そして軍人になった。その才能もあった。今の私と同じように。だが、もし他の道が開けていたとしたら、彼はやはり軍人になっただろうか?
私か?―――聞いてどうなる。クラウスと私とは全く別種の人間だと言った筈。
NATOに属する彼は、真面目で律儀で硬派で―――人殺しを嫌がる。
そこが彼の良い所であり、付け入られる隙でもあるんだが。
だから、
自分の人生を引っ掻き回される前に、その前に、引き金を引いて存在そのものを消してしまわなかったから、今更後に引けなくなった。
なら前に進めばいいんだが、彼の性格ではまず無理だろうな。
まず彼には男を好きになるという感情が理解できないだろうし、
次にそれを自分に許すことは彼のプライドが許さないだろうし、
それに、
仮に許したとしても
彼は私のように愛する人を傍に置くことを嫌がるだろう。
私にとってのマライヒのようにどれだけ支えとなり力となってくれるか知れないのに。
何故なら、
その人は銃を扱えないだろう?
END
彼らがファーストネームで呼び合うのかというツッコミは無しで頂きたい。
海外ファンフィクの世界です。背景もピンク(関係ない)
2年前ぐらいの下書きを発掘したので記念アップ。
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